天然物より天然らしく
養殖鯛の進化系
「ここらの波は凄かですよ。テトラポットを持ち上げるくらいの威力がある。その荒波の中を必死に泳ぐから鯛の身がしまるんです」と話す丸木水産漁業の丸木勝一専務。直径32メートルの大型いけすを6つも構え、15万〜20万匹の鯛を養殖する。「いけすは通常の10倍の面積。そこに半分の密度でゆったり飼うから、余計なストレスを与えない」。餌には人間にもお馴染みの栄養素が並ぶ。「ハーブやポリフェノール、乳酸菌などを与えています。抗生物質を使わない健康
な鯛を育てたかった。以前は生魚を与えていたけど格段に味が変わりました」 魚の鮮度を保つ活じめ技術にもこだわった。血抜き、神経抜き、骨髄処理など卓越した職人技が必要で、5年を要したそうだ。「社長自ら従業員を指導します。例えどんなに多くても一匹一匹丁寧に処理する。地道な作業だけど魚の鮮度に大きく影響するんです」
もっと魚を!
商品に込められた漁師の熱意
「従業員にも味噌の配合は秘密です」丸木水産には2つの天草謹製認定品がある。鯛の味噌漬けは、黄金色の秘伝味噌が鯛の美味しさを引き立てる逸品。「味噌選びから始めて、やっと塩分濃度が低い無添加味噌と出会った。割合を変えながらブレンドを繰り返し、納得のいくものが出来るまで長い時間がかかりました」 漁師の沖めしは、刺し身の余りを醤油漬けで食べる昔ながらの漁師めしがヒント。「タレの配合がポイントでした。何十種類も試作を重ねて、やっと醤油とみりんのバランスが大切だと気付かされました」両品とも加工品とは思えないプリプリの食感、その新鮮さに驚く。秘けつは鯛の水分含有量。「天然物より10パーセント程少ないんです。水分が少なく身がしまっているから歯応えがある。天然には絶対出来ない食感ですよ」「これからも売れる商品を開発し努力していか
ないと。ロングセラーで愛される商品を作っていきたい」。新風を吹き込み精進を惜しまない。この熱意はきっと消費者に届くだろう。
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