何気ないプレゼントが
新しい特産品づくりへ
「うまい!」。正月の雑煮を口にした株式会社アマレイの代表・前田重博さんはうなった。コリコリの歯応え、濃厚な味、汁をすすれば鶏の旨味がコクとなって口いっぱいに広がる。それこそが幻の地鶏・天草大王だった。「たまたま養鶏家の友人から頂いて…。普通の鶏とは全然違った。これは天草の新しい特産品になると思いました」。この偶然の出会いがきっかけで前田さんの商品開発が始まった。 水産加工業を営むアマレイにノウハウはあった。しかし「魚介は専門だけど鶏肉は素人。特に鍋の命ともいえるスープ作りは手探り状態。和食の専門家にお願いして天草大王の鶏ガラを使ったスープを作ってもらった。具材のつみれからも良いダシが出るから全体のバランスを考えてシンプルな味に仕上げたり…納得いくまで何度も試作を繰り返した」。さらに天草らしさを強調するため地元のゆず胡椒とおし包丁麺をセットにして商品化した。「おし包丁は郷土料理だし煮崩れしにくい。スープとの相性も抜群ですよ」
鶏らしく育った鶏こそ
天草謹製にふさわしい
南向きの日当たりの良い鶏舎で「コケッコッコ」と元気に動き回る鶏たち。ここは”天草大王鍋”誕生のきっかけをつくった張本人・堤田亨さんの鶏舎。天草大王の指定農場で約2000羽が飼育されている。「なるべく自然に近か環境でゆったりのびのびと育てています。餌は無薬品の飼料を中心に自然に生えた薬草もやりよる。いちばん気を配るとが病原菌の感染。野鳥と接触せんごと鶏舎には目張りをして…雀一匹入らんようにしている。健康で丈夫な鶏が上質な肉になるとですよ」。通常、天草大王は100日飼育で出荷できるが「十分育てた方が筋肉がしまって美味しくなる。うちでは130日〜150日育ててから出荷します」 天草大王は一度絶滅し復元されたが、元々は明治時代に天草に伝わった地鶏。前田さんは発祥の地であるここから”天草ブランド”の普及を図っている。「鍋は商品化の第一弾。これからの展開も考えていますよ」。前田さんと堤田さんの挑戦は始まったばかりだ。
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